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「雲のむこう、約束の場所」を見て

 初めて新海誠の映像を見たのはBSFのOPムービー。アキバで先輩と見て、その出来に驚いたものでした。でもその名を知ったのはネットで話題になった「ほしのこえ」のデモムービー。「デモだけで泣けるから」という言葉を読んで、見てみたのですが、ええ、泣けましたよ。デモだけで。当然、DVDも買いました。ほぼ個人作業という事で正直荒っぽい感じも受けましたが、そんな事が気にならない切ない話と美しい絵で見てよかったと思ったのでした。

 その新海誠の新作「雲のむこう、約束の場所」を見てきました。

 実を言うと見る前には「これまで見ていた新海誠のものを『いい』と思っていたのは、個人で作っているからという事じゃないだろうか。」と懸念してました。杞憂でした。

 話は津軽海峡で米軍と「ユニオン」に分断されて占領されたパラレルワールドの日本。そこで津軽に住む二人の少年がユニオンの北海道(蝦夷)に聳え立つ「塔」に向けて自作飛行機を飛ばそうとする。そこにクラスメイトの佐由理も加わり、彼女を連れて塔まで向かう事を約束する。飛行機を作りながら3人で夏を過ごす。しかし、自作飛行機は完成せず、それから三年経ち、佐由理は消息不明、拓也はアーミーカレッジの研究員。そして浩紀は東京の高校で孤独に過ごす。そして、ユニオンとアメリカとの関係は悪化していく。
 南北に分断された日本という設定だけで結構、ぐっと来るんですよね。自分ももしかするとユニオンの下で生活をしていたのだろうかとか、あるいは親族がユニオン下にいるとか。

 夏の津軽地方の光景が美しい。新海調とでも呼べばいいのでしょうか。夕暮れの教室の中の絵も健在です。この人の絵は光だけではなく、陰の部分の書き込みもすごいと思うのです。鉄道のレールなどの金属もその錆びた感じ、使い込まれた感じが表現されています。こういうのっていいと思えるんですよ。今回は戦争前に計画されていて今は放棄された北海道と本州を結ぶ鉄道トンネルの駅や設備が飛行機の工作場として出てきますが、駅に水が溜まっていて湖の上に駅舎やホームがあるようで幻想的でさえあります。そんな場所を見てみたいような気がします。そして、開戦前夜の冬の青森の海岸から海上に浮かぶ航空母艦。これって冬のスケート場、中学の夏に通った平和な海岸であるわけですね。きれいですが、寂しく怖い感じでした。
 さて、塔なのですが、最初のイメージはもっと太さがあるものだと思ったのですが、絵では意外に細いと思えました、でも東京からも見えるくらいの巨大建造物だったのですね。それが周囲に平行世界を発生させるという事ですが、周囲というのは地上の意味なのでしょうかね?(でないと周囲を飛行する事も破壊する事もできないのでは?)。あと、塔は平行世界を佐由理の夢の中に流し込んでいるという事でしたが、皮肉にも、それは一人しかいない世界、でも、拓也を求めている世界であったわけで、それを解析して軍事利用はできなかったのでは?それにしても佐由理の夢の中の塔も不思議な感じでした。真四角の太陽の塔みたい…それとも青森にああいう建造物やオブジェがあるのでしょうか。


 話で印象的だったのは、夢を見続ける佐由理と生きていく事に意味を見出せなくなりかけている浩紀が夢と現実が交錯して出会い、もう一度会おうと約束するシーンが印象的でした。お互いがお互いを求める気持ちがよく出ていたと思います。そして、浩紀よりもちょっと大人になった拓也のテロリスト集団への参加と、佐由理を目覚めさせるために塔へ飛ぼうとする浩紀の計画を一度は否定して、力づくでもその考えを捨てさせようとする所では、「あ、こりゃあかんわ」と思いましたが、でも拓也にしても本当に夢を忘れたわけでも捨てた訳でもないことが分かってほっとしました。
 そして、ヴェラシーラで塔の所まで佐由理を連れて飛んでいくと、彼女が目が覚める直前に「目が覚めると何か一つ大切な事を忘れてしまう。だから、拓也君が好きという思いだけは忘れさせないで」という願いと、目が覚めてしまったときに「何か大事な事があったはずなのに忘れてしまった」という佐由理の嘆きもありましたが、それはきっと二人でもう一度生み出す事ができる事だから、失われても多分、大丈夫な事だと思います。現実としては映画が終わった後からのストーリーは、決していいものじゃないでしょう。それこそ戦争中に敵国に飛んでいって、そりゃ敵国の設備とはいえ、「塔」をぶっ壊してきたわけですから。逮捕はされるだろうなあ。でもヴェラシーラが塔の周りを周回して、そして戻ってくるのを見ると、そんな事ってどうでもいいやと思います。繊細で、でも長閑な飛び方をして、夏休みのある日が飛行機としてデザインされている様です。


 佐由理はミカコは似ていると思います。現実世界との接触を15歳のまま絶たれてしまったのですが、ミカコとの違いは3年間拓也の事を思い続けていたという現実に流れた時間の違いでしょうか。どうでもいいですけど、体育座りが両者の共通点だったりするんですね。ええ、分っている方なのだと思います。不本意でしょうが(笑)
 佐由理の夢からの目覚めと、拓也の生きる意味の再発見、現実世界に意味を持って生きるというのがこの映画の一つのテーマの再生なのかと思いました。「世界は本当に綺麗なのに、私だけがそこから遠く離れちゃってる気がするんだ。」「でも、僕を囲む世界は、この先何度でも、僕を裏切る」とても世界と世界の中の自分に対してネガティブに見えますが、でも、この物語の中で、二人が出した結論はこの二つの印象的なセリフの逆だと思えます。この3人にとっての世界は住みずらいものだとはしても、きっと生きていく価値のある世界だと思います。3人はかなえられない約束をしたとありますが、ところがどっこい、叶えてしまったではないですか。それもお互いを求めるという気持ちを原動力として。というか随所に最終的には世界は見放していないってシーンが随所にあった様に思うんですよ。
 周囲の大人、特に岡部と富澤なのですが、最初はこの二人がつながっているとは思いませんでした。そして、その二人も昔飛行機を作っていた。だから岡部は結局のところ拓也と浩紀の意図を認めるんでしょうね。でも、岡部と富澤は何を求めて、何を諦めたのでしょう。そして、真ん中に写っていた少女は…。


 失ったものはまた、作り出す事が必ずできるというメッセージを私はこの作品に感じたのですが、機会があれば、セリフやシーンの確認のためにもまた見たいと思います。できれば屋内で大画面モニターで見てみたいと思っています。

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